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誰にもみせるつもりはなく、

矢萩由三子

昨年のある日、一人暮らしの父の所に、父にとって、孫やひ孫が集まりました。

ひ孫たちが、仏壇のおリンを鳴らして遊んでいて、その横にあった

膨らんだ封筒を父が出してきました。

その中に入っていたのは、綺麗に切り揃えられた紙に、文字がたくさん書かれている紙の束でした。

「誰かに勧められたわけでもない。

誰かに見せるつもりで書いたものでもない。

書こうと思って書いていた。

書き終えるのに10年以上かかってしまった。」

それはお経でした。

40年ほど前に書いたもの・・。

父がそんなことをしているとは、初めて聞きました。

なんのためにしたものなのか・・。

いいお経だから、書きたかったと言ってましたが。

先日、父の家に懐かしいものが転がっていました。

私が叔母に連れていったもらったうたごえ喫茶の歌集と、私の小学校で使っていた歌集です。

耳が遠いのですが、これ以上悪くならないように、毎日歌を歌うことにしたというのです。

父は朝晩、毎日お経を1時間ほどしています。

そのほかに歌を歌うのかと、驚いています。

2日、父の90歳の誕生日でした。

100歳を超えるのが目標です。

私がいけば、風呂を洗って湯を沸かしてくれます。

今日は「松を入れてないぞ。どうする?」なんて聞いてくれます。

玄関には松の苗が買われていました・・。持って帰って植えなさいって・・・・(今は無理よ・・雪だもん)

私より記憶力よくて助かっています。

元気でいて欲しいです。

今月父の所に行く時、プレゼントを持っていく予定。

喜んでくれるかどうか・・わかりませんが・・。

長生きするために、ぜひ使いこなして欲しいと思っています。

話はもどります。

誰かに勧められなくても、見せるためのものでもないことを、コツコツとやり続けるってどういうことだろう・・

その答えがわかる日が私にくるだろうか・・。


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